AIエージェント活用シナリオ15選(営業・人事・法務ほか)

自社にAIエージェントを導入しようと考えているが、実際にどのような業務でどう活用できるのか、具体的なイメージが湧かないというIT担当者の方も多いのではないでしょうか。
「業務効率化に役立つ」という抽象的な説明を読んでも、自社の営業・人事・経理といった各部門の日々の業務にどう当てはめればいいのかが見えてこないケースは少なくありません。
一方で、すでに Google Workspace や Microsoft 365 などのクラウドサービスを導入している企業であれば、普段利用しているメールやストレージ機能とAIエージェントを連携させることで、想像以上に幅広い業務を自動化できる可能性があります。
本記事では、「AIエージェントの活用シナリオ」を部門別に紹介しています。AIエージェントを導入するにあたってしておきたい「基本的な仕組み」や「開発の進め方」にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
<この記事でわかること>
- AIエージェントとRAGの違い
- 業務がAIエージェントに向いているかの見極め方
- 業務別のAIエージェント活用事例15選と開発の進め方
そもそもAIエージェントとは?
AIエージェントとは、目標を伝えるだけで自ら計画を立て、複数のツールを使いながら自律的に行動をするAIシステムのことです。ChatGPT のような生成AIとは大きく異なり、業務効率化においてより強い味方となってくれるツールです。
AIエージェントが業務を自動で進める仕組み
AIエージェントが自動で業務を進める仕組みは、「認識」「推論」「行動」という3つのステップを繰り返すことで成り立っています。一例として、1つの業務を指示された場合にどう進めるのかを見てみましょう。
ステップ1.業務内容を「認識」する
業務を指示された場合、AIエージェントは、まずその業務内容を「認識」します。以下の情報を読み取り、現状の状況を把握してくれます。
- 与えられた目標
- 参照可能な情報(メールの内容・ドキュメント・過去のやりとりなど)
この際、参照可能な情報をまとめておくとスムーズです。
ステップ2.参照した情報から目標達成の要素を「推論」する
次に「推論」の段階で、目標を達成するために何をすべきかを考えます。複数ある選択肢の中から、次に取るべき行動を判断するイメージです。
正確な推論のためには、参照する情報の正確さが求められるため、最新の情報にアップデートしておく必要があります。
ステップ3.具体的な操作をツールを使って「実行」する
推論が完了したら、次は「行動」の段階です。以下のような具体的な操作を、ツールを使って実行してくれます。
- メールを送る
- Excel(スプレッドシート)を更新する
- カレンダーに予定を登録する
ポイントとなるのは、この一連の流れが1回で終わるわけではないという点です。行動を起こした結果を再び「認識」し、目標が達成できていなければ次の「推論」に進むというサイクルを、タスクが完了するまで繰り返します。
具体的な指示があった場合におけるAIエージェントの手順
もし、「見積書を作成して」という指示があった場合、AIエージェントは以下のような流れで進めます。
- 認識:過去の類似案件のデータや顧客情報をストレージから探す
- 推論:集めた情報から見積金額や項目をどう構成すべきか判断する
- 行動:見積書のドキュメントを作成し、担当者へ確認のメールを送る
- 認識:担当者からの返信内容(承認・修正依頼等)を確認する
- 推論・行動:修正が必要であれば内容を反映し、再度確認を依頼する
こうした「認識→推論→行動」のループを人の介入なしに回せることが、1回の質問に1回の答えを返すだけのチャットAIとの決定的な違いです。
AIエージェントが向いている業務
AIエージェントは、以下のような業務で特に効果を発揮します。
- 複数のステップを経て完結する業務(情報収集→整理→資料作成等)
- 定型的な判断を伴う業務(問い合わせの振り分け・承認フローの実行等)
- 複数のツール・システムをまたいで処理する業務(メール確認→スプレッドシート更新→通知送信等)
逆に、社内規程への単純な質問応答など「正確な情報を素早く探して答える」ことが目的の場合は、AIエージェントを使わず、RAGのように、より簡易的な機能で十分なケースもあります。そのため、AIエージェントを導入する際は、自社が解決したい課題が「情報を探したい」のか「複数の工程を自動化したい」のかを見極めるところから始めるといいでしょう。
AIエージェントの活用事例15選を業務別に紹介
自社の業務にどう当てはめられるかをイメージしやすいよう、部門別に活用事例を紹介します。
【営業】メール返信・顧客調査・商談準備
営業部門でAIエージェントを導入すると、営業担当が商談準備にかける時間を削減し、顧客との対話そのものに集中できる時間を増やせるメリットがあります。どのような活用方法があるのか、業務別に見ていきましょう。
【営業】メール返信
メールの返信では、問い合わせメールの内容をAIエージェントが自動で読み取り、内容に応じた返信案の作成が可能です。
AIエージェントを導入すると、単純な製品仕様の質問であればそのまま送信できる回答を、複雑な内容であれば担当者が確認・修正するための下書きを用意できます。
返信までのスピードが上がるため、機会損失の防止にもつながります。
【営業】顧客調査
顧客調査もAIエージェントの活用が有効な業務になります。商談前に、対象企業のWebサイトや業界ニュース・IR情報などをAIエージェントが自動でリサーチし、要点をまとめたレポートを作成するといった使い方が出来ます。
これまで担当者が個別にしていた事前調査の時間を短縮でき、商談の質を高めるための準備に充てられます。
【営業】商談準備
商談準備も、AIエージェントの活用が有効な業務の1つです。過去の類似商談の履歴やヒアリング内容をもとに、提案資料のたたき台をAIエージェントが作成してくれます。
ゼロから資料を組み立てる手間を省けるだけでなく、担当者は顧客に合わせたカスタマイズや伝え方の工夫に時間を使えるようになります。より効果的な営業ができるようになるでしょう。
【人事・総務】応募者対応・日程調整・社内問い合わせ
人事・総務部門では、繰り返し発生する定型的な問い合わせ対応をAIエージェントに任せることで、担当者は個別対応が必要な業務に集中できます。
どのような活用方法があるのか、業務別に見ていきましょう。
【人事・総務】応募者対応
AIエージェントは、応募者対応も可能です。応募者からの問い合わせメールに一次対応し、選考ステップの案内や必要書類の連絡をAIエージェントが自動でしてくれます。そのため、採用担当者は個別対応が必要な応募者とのコミュニケーションに集中でき、より質の高い採用活動ができるでしょう。
【人事・総務】日程調整
面接や社内会議の日程調整も、AIエージェントが得意とするものの1つです。候補者・面接官双方のカレンダー情報を参照しながらAIエージェントが自動でしてくれます。複数人の予定を突き合わせる手間のかかる作業を省力化できるだけでなく、リスケの際にも大きく活躍してくれるでしょう。
【人事・総務】社内問い合わせ
社内の問い合わせも、AIエージェントが得意とする業務の1つです。以下の問い合わせに関して、自動で回答してくれます。
- 就業規則
- 経費精算のルール
- 休暇申請の方法
社内規程をナレッジソースとして参照させることで、担当者に確認せずとも社員が自己解決できる仕組みを作れます。総務・人事への定型的な社内問い合わせをAIエージェントへ投げられるため、他の業務に対応できるようになるでしょう。
【経理】請求書確認・経費チェック・レポート作成
正確性が求められる経理業務では、AIエージェントによる一次チェックと人による最終確認を組み合わせるハイブリッド運用が現実的です。
どのような活用方法があるのか、業務別に見ていきましょう。
【経理】請求書確認
経理部門がAIエージェントを活用する際、請求書確認は大きく業務量を削減してくれるものの1つです。受信した請求書の内容(金額・取引先名・振込先等)をAIエージェントが自動でチェックし、過去のデータとの不一致がないかを検知してくれます。
目視での確認作業にかかる時間と見落としのリスクを減らせます。人の目で見落としてしまうようなミスでも、拾い上げてくれるでしょう。
【経理】経費チェック
経費チェックも、AIエージェントが得意とする部分の1つです。社員から提出された経費申請の内容が、社内の経費精算ルールに沿っているかをAIエージェントが自動で確認してくれます。ルール違反や不備がある申請を早期に検知し、経理担当者の確認作業の負担を減らすことが出来ます。
【経理】レポート作成
月ごとのレポート作成も、AIエージェントが得意とする業務の1つです。スプレッドシートに蓄積された月次の売り上げ・経費データをAIエージェントが自動で集計し、定型フォーマットのレポートを作成してくれます。手作業での集計・グラフ化にかかっていた時間を大きく削減できるでしょう。
【法務】契約書チェック・社内規程の検索
AIエージェントは、法務分野でも活用できます。ただし、最終判断を必ず人(専門家)が行うことを前提に、AIエージェントは確認作業の一次スクリーニングとして活用する形が適切です。
どのような活用方法があるのか、業務別に見ていきましょう。
【法務】契約書チェック
法務分野において、AIエージェントを活用できる部分として契約書のチェックがあります。契約書の条文を過去の類似契約や社内の標準契約書と比較し、不整合や見落としがちな条項がないかをAIエージェントがチェックする形です。最終的な法的判断は必ず専門家がすることを前提に、確認作業の一次スクリーニングとして活用するといいでしょう。
【法務】社内規程の検索
社内規程の検索も、AIエージェントが得意とする部分の1つです。コンプライアンスルールや社内規程に関する質問に対し、根拠となる条文を示しながらAIエージェントが回答してくれます。関連する複数の規程文書を横断的に検索できるため、該当箇所を探す時間を大幅に短縮できるでしょう。
【CS】問い合わせ分類・回答案の作成
カスタマーサポートは対応スピードが顧客満足度に直結するため、AIエージェントによる一次対応の効果を特に実感しやすい領域です。どのような活用方法があるのか、業務別に見ていきましょう。
【CS】問い合わせ分類
顧客からの問い合わせに関する業務は、AIエージェントの効果を実感しやすいものの1つです。中でも、問い合わせ内容をAIエージェントが自動で分類するだけでなく、内容に応じて適切な担当部署へ振り分けてくれるメリットは大きいでしょう。一次対応の窓口として機能させることで、対応漏れや振り分けミスを防げます。
顧客からの信頼にもつながるため、導入効果の大きい業務です。
【CS】回答案の作成
AIエージェントは、回答案の作成も得意としています。例えば、よくある質問に対しては、過去の対応履歴やFAQをもとにAIエージェントが回答案を自動作成するといった形です。担当者は内容を確認したうえで送信するだけで済むため、対応スピードが向上します。
【情シス】IT問い合わせ・障害対応
情シス部門への問い合わせは似たパターンが多いため、AIエージェントによる自動化と相性の良い領域です。
どのような活用方法があるのか、業務別に見ていきましょう。
【情シス】IT問い合わせ対応
IT問い合わせ対応は、AIエージェントに対応してもらいやすい領域です。例えば、以下のような定型的な問い合わせにも、自動で対応が可能です。
- パスワードを忘れた
- パソコンがインターネットにつながらない
- ソフトのインストール方法がわからない
似たパターンの問い合わせが多い情シス部門は、自動化との相性が特に良い業務でもあります。比較的簡易的な対応で可能な部分に関しては、AIエージェントを活用していくといいでしょう。
【情シス】障害対応
障害対応も、AIエージェントの活用が可能です。例えば、システム障害が発生した際に、過去の類似トラブルの対応履歴をAIエージェントが検索し、対応手順を担当者に提示するといった使い方ができます。加えて、復旧までの初動対応にかかる時間を短縮し、対応の属人化も防げます。
AIエージェント開発を進める3つのステップ
AIエージェント開発をするには、以下の手順で進めてみてください。
ステップ1.自動化したい業務と課題を整理する
AIエージェント開発をする際、まず自動化したい業務と現状の課題を具体的に整理するところから始めます。「業務を楽にしたい」という漠然とした目標では、AIエージェントを設計できないためです。
例えば、以下のような形で言語化してみましょう。
誰が | AIエージェントが |
|---|---|
いつ | 毎週月曜日の朝に |
何を | 先週のデータを |
どのツールで | ドキュメントツールで |
どうする | 担当チームのメール宛に送信する |
上記をつなげると、「毎週月曜日の朝、先週のデータを取得して要約レポートを Doc に書き出し、担当チームの Gmail 宛に送信する」といった形になります。
この段階で対象業務の範囲を明確にできていると、後工程の手戻りを防げます。新人に指示をするように、具体的かつ明確な指示を作るよう意識しましょう。
ステップ2.アプリとの連携方法や必要な機能を決める
自動化したい業務と課題を整理できたら、次にどのアプリと連携させる必要があるかを決めます。代表的なのは、以下のアプリです。
- Gmail
- Google ドライブ
- Google カレンダー
- Word
- Excel
もし、外部の業務システムとの連携が必要なのであれば、どう使用するのかまで整理しておくといいでしょう。
例えば、社内情報を参照して回答する要素が強い場合はRAG的な機能を、複数の作業を連続して実行する要素が強い場合はエージェント機能を重視するなど、業務の性質に応じて必要な機能の優先順位を決めていく形です。
この段階で、既存のツールでどこまで対応できるか、個別開発が必要な範囲はどこかの切り分けもしておくと開発をスムーズに進めやすくなります。
ステップ3.開発・テスト・運用まで進める
要件が固まったら、実際の「開発」「テスト」「運用」というフェーズに進みます。その際、開発したAIエージェントをいきなり全社展開するのではなく、特定の部署や業務に絞ったスモールスタートで試験運用するようにしましょう。いきなり完璧なものを開発するのは難しいためです。
AIエージェントのテスト期間中に実際の業務データを使って動作を検証し、想定通りの精度が出ているかを確認したうえで、段階的に対象範囲を広げていきます。
失敗のリスクを抑えながら改善を進め、徐々に定着させていく進め方が現実的です。
AIエージェント個別開発の3つのプロセスと費用感
AIエージェントは個別開発も可能です。そのような場合、以下のプロセスと費用感を持っておくと良いでしょう。
要件定義:自動化したい業務と連携システムを整理する
個別開発において押さえておきたいポイントが、要件定義です。最初のプロセスとして、以下の点を必ず決めておきましょう。
- 自動化したい業務の詳細
- 連携が必要なシステム(Google Workspace や社内基幹システムなど)
- 想定される利用者数や処理件数
これらを決めたら、開発会社と共有していきます。
この段階での整理が甘いと、開発後に「思っていたものと違う」というミスマッチが生じやすくなるため、時間をかけて丁寧に進めてください。
開発・テスト:業務フローに合わせたエージェント構築と検証
要件が固まったら、実際のAIエージェント構築とテストのフェーズに進みます。
業務フローに合わせてAIエージェントの動作ロジックを設計し、実際の業務データに近い環境でテストを重ねていきます。特に判断を伴う業務では、AIエージェントの判断結果を人が確認・修正できる仕組みを組み込むといいでしょう。
AIもミスをする前提で考えておくと、安全に運用がしやすくなります。
費用感:スモールスタートから始める開発コストの目安
AIエージェントを開発する際は、スモールスタートから始めるようにしましょう。なぜなら、AIエージェントの開発費用は、対象業務の複雑さや連携するシステムの数によって大きく変動するためです。
いきなり全社規模の大がかりな開発をするのではなく、特定の業務・部署に絞って小規模に始めます。その後、効果を確認しながら段階的に範囲を拡大していく形です。
まずは自社の業務にどこまでの開発が必要かを整理したうえで、複数の開発会社に見積を依頼し、相場感をつかむところから始めるといいでしょう。
AIエージェント活用事例から自社の業務自動化を考えよう
AIエージェントは、「複数の工程をまとめて処理する技術」という役割をこなします。
すでに Google Workspace や Microsoft 365 を利用している企業であれば、メールやストレージとの連携を通じて、メール対応・社内情報の検索・複数業務をつないだ一連の自動化まで、追加の大きな投資なしに着手できる可能性があります。
AIエージェントは、営業・人事・経理・法務・CS・情シスなどさまざまな部門で活用が可能です。まずは自動化したい業務と課題を整理し、クラウドサービスとの連携方法を検討したうえで、特定の業務に絞ったスモールスタートから始めることをお勧めいたします。
貴社でもAIエージェントを活用してみませんか?
「AI-Clutch」を運営するUSEN ICT Solutionsは、Gemini Enterprise や Microsoft Copilot Studio など、企業向けのさまざまなAIエージェントを提供しています。「生成AIだけでなく、AIエージェントも活用していきたい」と考えている方はぜひご相談ください。
ご担当

AI-Clutch 編集部
AI-Clutch 編集部には、Google Workspace with Gemini や Gemin Enterprise、Microsoft Copilot、Microsoft Azure OpenAI Service などのAIソリューションを販売するセールスメンバー、Google や Microsoft と連携してサービス拡販の施策を実行する企画・マーケティングメンバー、Claude を活用して開発を行うエンジニアが所属しています。
